シンデレラ
メイは焦っていました。
「大人になれば、僕も綺麗な女の人になるんだ」
と、信じて疑わなかったメイですが、胸は膨らまず、背も伸びず。 子供の時と変わらぬ姿のまま、月日は流れとうとう成人の日を迎えてしまいました。
いずこからやってきた魔女は、そんなメイを哀れに思いメイに魔法をかけるのでした。 するとどうでしょう。メイの背丈は見る見る伸びていき、大人びた艷やかさを持った顔つきへと早変わりしていきます。 魔女はさらに魔法をかけ、その姿に似合う素敵なドレスをあつらえるのでした。
「これであの方に会って御覧なさい、きっと良い運びになるでしょう。」
魔女に言われるまま、メイはジョニーのもとに行きました。
「おぉ、そこゆく麗しのレイディー、俺と一緒にお茶でもいかがかな?」
「やだなぁ、ジョニーってば。僕だよ。」
「これは失敬。どこかでお会いしたのかな?君のような美女の名前を忘れるとはね・・・。」
(あっ、そうか。今の僕はいつもと違うんだった!ジョニーが分らないのも当然だよね。 ・・・まあ、いいや!せっかくのチャンスなんだし、楽しまなくっちゃ!)
「ジョニーさん・・・でしたよね。さっきお茶でもと言ってたけど、僕・・・じゃなかった。 私、今すごく暇してるんだ。良かったら・・・その・・・デートしない?」
「レディーの頼みとあらば、喜んで」
それからメイはジョニーにエスコートされて、近くの街でデートを楽しみました。 ゆったりとした、とても心地の良い時間はあっという間に過ぎて行き、 気づけば夕暮れになってしまいました。 メイの脳裏を魔女の言葉がよぎります。
「日が暮れると同時に魔法は解けてしまいます。それまでに帰ってきて下さいね。」
まだまだジョニーと一緒に楽しみたいメイですが、目の前で魔法が解ける瞬間を見られる訳にもいきません。
「ジョニーさん。今日は有難う。とても楽しかったよ。またどこかで会えたらデートしましょ?」
名残惜しい気持ちを抑えて、メイは駆け足で立ち去りました。
「本当はずっと一緒にいたかったけど・・・さようなら」
ジョニーはメイが去るのを笑顔で見送りました。
「全く・・・どういう理屈かは知らんが、困ったもんだな。 いくら姿形が変わろうと、お前さんの事はこの俺が誰よりも知ってるんだぜ。 まぁしかし、俺もそろそろ白黒付けんと行けない時が来たのかな・・・。さぁて、どうしたもんかな・・・」
-end-