GGダイジェストコミックス 感想

2021年5月記


ゲーム本編の漫画化。誰しもが思い描いた内容が、とうとう実現しました。

作画のスメラギさんは、『ブレイブルー』のコミカライズを手掛けています。かつては雑誌「電撃大王」で『GGXX』の4コマを執筆したこともあります。さらに言うと両作品の同人誌も描いている方でした。

技量は申し分なく、今は同人から離れていて作品への愛も深いということで人選としては適任だと思います。人によっては、当時の同人誌の内容がチラついてしまうかも知れません。絵が凄くうまいんですが、個人的にベタとかツヤの入れ方が特に良いなと思いました。ソルの髪や服の描き方が良いですね。


構成はシナリオテクノロジーミカガミ。シナリオライターを自社で育成して、依頼主の要望に合うライターをピックアップして脚本を書かせるという仕組みの会社みたいです。社名が載っているだけで、誰が書いたのかがハッキリしないので、なんとも言えません。

ストーリーは大分省略されていて、未見の人が読んだとしても、作品の導線にはなりにくいと思いました。

この漫画は、「往年のファン向けに『Xrd』で明かされた新たな設定と解釈に基づいて、主役周りのストーリーを整理させた物」という認識が正しいと思います。ソルとジャスティスの因縁は、ジャスティスをアリアと認識していないので、焦点がぼけたものになっていますが、これが正史となった訳です。ソルと関連性が薄い登場人物は、2、3コマの出演で済まされています。キャラクター一人ひとりのドラマを補完しだすと、今の十倍では済まないページ数になり、やむなく削ったという事情は理解できます。サービス的に、各キャラのEDは網羅してあったり、苦心した形跡は見られますが、ほとんど描写がないというのは、やっぱり違うんじゃないかなと思いました(訳:ミリアさんもっと見たかった)。

章ごとの感想を綴っていきます。



プロローグ

小説『BEGIN』で描写された内容を、途中経過を大幅に端折って描いてます。「目が覚めたら研究所に化け物が溢れていたという危機をどうにか生き延びたフレデリックが、色々あって親友に見捨てられてしまう」という話です。小説200ページが、漫画8ページになりました。小説ではフレデリックの戸惑いなんかが、詳しく描かれてます。


第一章

ジャスティスの覚醒から始まる聖戦が描かれます。ジャスティスは『Xrd』で元々大きかったと設定が上書きされたので、巨大化して登場します。

聖騎士団を結成したという解説と共に、若い頃のクリフが描かれてます。クリフも聖騎士団を語る上で大変重要な人物なのですが、出番はこれで終わりです。時系列を考えるとクリフは団の結成に立ち会っておらず、もう少し後での加入だったと思います。ここでは団を代表する人物として描かれていると推測します。

単独行動を取るソル。命令に反したソルを咎めるカイ。昔のギルティギアで非常によく見た光景。


団のキャンプで「そろそろ潮時か」と呟き、本部へ直行するソル、それを追うカイ。キャンプから本部が近かったんだったら、わざわざ野営をする意味ってなんだろう?遠かったら、ソルとカイはずっと追っかけっこしていた事になります。シュールです。

本部には封炎剣と封雷剣が共に立てかけてあります。つまり、「この時点でカイは封雷剣を持っていなかった」ということになります。ページを戻して、ソルを問い詰めているカイをよく見てみると、普通の剣を持っています。「封雷剣はギアと戦うためではなく、ソルと対峙するために初めて手にした」という設定は面白いですね。

「正確でクソ速ぇ」攻撃を繰り出すカイのポテンシャルの高さに驚くソル。ソルは、『Xrd』ではカイの方が見せた「目眩ましからの不意打ち」を仕掛け、ぶっきらぼうに投げ。立ち上がったカイに、すぐさまボディブローをかまし、不敵な笑みを浮かべながら立ち去りました。

一連の戦闘シーンは絵が凄いですね。ソルとカイが剣を交える大ゴマは特に良いです。


第二章

数年後・・・と書かれてますが、正確には三年後。衣替えをしたソル。封炎剣を片手にマントを風になびかせているのは『XX』のオープニングを見てるようで懐かしいです。

聖騎士団の戦いが絵として描かれたのは今回が初めて。新鮮でした。

ギアの猛攻に押され、壊滅寸前の部隊を救ったのは若き日の団長カイ。奥義を繰り出して、絶望的だった聖騎士団を救います。ライド・ザ・ライトニング一発で戦況がひっくり返りました。凄い。

しかし、突然のジャスティス登場。すぐさま聖騎士団にガンマレイを放つジャスティスの容赦の無さ。対して、防衛陣を張り、なんとか凌ぐカイ。ここも、あっさり描写していますが、ガンマレイを凌ぐだけの力がカイに有るという事実に驚きです。たぶん、フォルトレスディフェンスでテンションゲージは空っぽになったに違いありません。

ガンマレイを放ったジャスティスは、すぐさま撤退します。ここは正直なぜなんだろう?と思いました。元々、ギアが優勢という状況をカイという天才個人の武力で持ち直した戦場だったので、そのままジャスティスがギアを率いて攻め通せば押し勝てたはずです。この後のソルとの因縁を描きたかったんだろうと思いましたが、だったら、この場にソルが登場でも良かったと思いました。もしかしたら、ジャスティスは用心深い性格なのかも知れません。司令塔の自分が死んでしまうと、周りのギアは機能を停止するからです。でも、説明が無いので、よく分からない描写になっています。


転移したジャスティスに、すぐさま襲いかかるソル。巨大なジャスティスの攻撃を、隙間を縫うように交わし、技を繰り出していきます。途中経過は省略されていますが、ソルは制御装置であるヘッドギアを外さないままで完全体のジャスティスに勝てたようです。つまり、通常のソルを上回ると言及されているイノも、ジャスティスを倒せることになります。最後は「ナパームデス」。一撃必殺の待機モーションから、特徴的な前傾姿勢までしっかりと再現していますが、ページ数節約のためか、技を出すシーンは省略されています。

聖騎士団が到着した頃には、ジャスティスは倒れ、ソルは姿を消していました。高熱で溶かされた体を見たカイは、全てはソルの仕業だと確信します。ここも、もし聖騎士団が駆けつけなかったらどうするんだろうか?と疑問に思いました。多分、ジャスティスが倒れた時点で、ギアの軍勢が機能を停止し、おかしいと思った聖騎士団があちこちで調査してたんでしょう。ジャスティスが転移した際に、法力がかすかに残っていて、それを目安に辿り着いたのか?とか色々考えましたが、作中では言及ありません。ちょっと詰めが甘いソルと、きっちり後始末するカイ。


第三章

急に色々出てくる登場人物。まず、テスタメントがめっちゃカッコいい。あと凛とした表情で強さと美しさが同居するミリアさんが綺麗で良いです。封印の影響でジャスティスはお馴染みのテッカマンになりました。あと、キャラクター絵は、後ろの方のページから全部コピーされてました。

初代のジャスティスステージは次元牢として描かれています。牢の扉を開け、主の前で復活を告げるテスタメント。次元牢がどういう構造をしているのかよく分かりませんが、賊が侵入できたとしても、封印を解くのは難しいという代物なんでしょうか。聖騎士団の警備網をたやすく突破できるテスタメントが地味に凄いって事なんでしょうか。

捕らえたあらくれ者から大会の存在を聞くソル。説明書など書いてある導入シーンの再現です。割とドライに仕留めてましたが、漫画では少しコミカルになっていました。


大会。後ろで手を組み、ザトーの方をキッと睨みつけるミリアさん。いやー本当に作画が素晴らしいです。ザトーの方は自信たっぷりな様子。よく見たらザトーとボルドヘッドというW塩沢兼人に挟まれてます。

いきなり出てきた進行役の女性から、まさかの総当り戦=バトルロイヤルでの開催が発表。狭い会場に集められた参加者達は、秩序無く手当たりしだいに戦いはじめます。大会ってこんなものだったのか・・・。てっきりトーナメントみたいな物かと思ってました。

ミリアさん対ザトー、ミリアさんの太ももが眩しい。チップ対ポチョムキンはまぁ想像した通り。一撃必殺の破壊力 対 一撃を通さないスピードというゲームでも盛り上がる組み合わせです。メイちゃん対ボルドヘッド、ハゲ嫌い対ハゲ対決。どこか嫌そうな顔をしてるメイちゃん。アクセル対クリフはどういう因縁なんだろう。獲物が大きい繋がり?各試合は経過も結果も描かれず、1コマで終わります。クリフはジャスティスとの戦いに立ち会わせるべきだったと思うんですが、ソルとカイの因縁が優先され省略されます。

本気を出さないソルに苛立つカイ。ソルは「茶番はもう良いだろう」と主催者を呼びます。気づいたらいなくなってた他の出場者達。

主催者のテスタメントは、骸骨で出来た牢屋にカイを閉じ込めます。こういう召喚術の使い方もあるのね。ディズィーを守る時とかにも使ってそう。『X』とか『紅い戦い』とか。

テスタメントはジャスティスの復活に最後の生贄を捧げようとソルに斬りかかります。次々に召喚術を繰り出すテスタメント。横で見ていたカイの助言もあり、ノーダメージでかわしていきます。腹に一発、剣を刺されて膝を折るテスタメント。不死身のギアなんだから、もう少し頑張ってほしい!前哨戦にページを割いてはいられないのか、あっさりと自分が生贄となることを選択。クリフどこ?なんか思うところあるだろうから、出てきて喋ってほしかった。


次元牢にギアの刻印が浮かぶと、封印の扉が開き、ジャスティスが登場。「完全体じゃねぇのか」と、さりげなく新設定へのフォローを欠かさないソル。ニヤリと笑みを浮かべ、すぐさま飛びかかります。カイもスタンエッジを合わせますが、全て避けられます。身軽な不完全体の方が強いんじゃないか?

カイがジャスティスの打倒を宣言すると、ジャスティスが反論。「自分は人間により生み出された」と語り出します。会話の内容は『GG』のカイのエンディングに近いですが、ジャスティスが語る正義をカイは「詭弁だ」と一蹴します。まだ戦いが終わっていないので、悩んではいられなかったんでしょう。しかし、カイの正義感を根底から揺るがす衝撃的なシーンです。ジャスティスは語り終えると、すぐさまガンマレイを放射。エネルギーを充填するために、会話で時間を稼ぐという高等テクニック。完全体のガンマレイは防いだけど、至近距離での不意打ちだったので避けきれないカイ。とっさにソルに守られ、命は救われますが、気を失って倒れてしまいます。

ソルとジャスティスの決闘。脳裏に浮かぶのは恋人アリア。「ギアは悪」と決めつけ、狩り続けたソルに「あなたはどちらなの?」と語りかけるアリア。先ほどのジャスティスとカイの会話もあってか、突然アリアがジャスティスのような事を言い出すんです。この間、各キャラクターの目線は意図的に伏せるように描写されています。凄くいい演出だと思います。ページを進めると、爪を尖らせながら殴りかかるソルが描かれています。明らかにギアの力を解放して殴っています。多分、ここまで含めての「あなたはどちらなの?」なんだと思います。

「フレデリック」の名を口に出し、力尽きるジャスティス。それに対して「おい・・・」と動揺を隠せないソル。そう、ソルはジャスティスがアリアだとは知らなかったのだ~。知ってた方がドラマティックで良かったという印象は変わりません。複雑な表情のソル。

前章の感想で「ソルはギアの力を開放させずにジャスティスを倒したのでは?」と書きましたが、今回の戦いを見ている限りではヘッドギアを外さずともギアの力を解放できるみたいですね。ヘッドギアは戦いが終わった後に砕け、ゲームのエンディングでの「ヘッドギアが外れた状態」へと繋がりました。

最後に各キャラクターのエンディングの再現が描かれてます。闇夜に舞うボルドヘッド、どこか浮かない表情のカイなどは独自の描写だと思います。姐さんは大会にいなかったのか、宿場で煙管を吹くだけのゲスト出演で終わり。ミリアさんのおへそや腹筋が色っぽい。XX姿も見たかった。正気に戻ったテスタメントは義父の墓参り。このシーンはドラマCDで描かれてます。




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